AIを仕事に取り入れたいけれど、誰に、何を頼めばいいのか分からない。そんな会社の方に読んでほしい取材です。
株式会社GAIBAKOの生貝遼太(いけがい・りょうた)さんは、ゲームを作りながら、AIの講師や相談役として、会社や個人のAI活用を手伝っています。
相談に来る人は、何につまずいているのか。頼むと、どう進むのか。仕事で何を大事にしているのか。お話を伺いました。
個人から大きな会社まで、レベルに合わせて
――いま、どんなお仕事をされていますか。
ゲームを作りながら、AIの講師や、コンサルタント・アドバイザーのような立場で、個人・法人を問わず関わらせてもらっています。
――どんな会社や人から、相談が来ますか。
さまざまです。音楽を作っている会社の方もいれば、人材派遣の会社、デザイン会社もあります。
AIを活用しようという話なので、業種を問わず、いろんなところから相談が来ます。
規模もばらばらです。個人でやっている方もいれば、かなり大きな会社もあります。
――教える相手のレベルは、どのくらいですか。
レベルもさまざまです。エンジニアを10年以上やってきたことや、教員免許を持っていることなど、生かせる経験が多いんです。
だから、初心者の方でも、中・上級者の方でも、相手のレベルに合わせてやらせてもらっています。ChatGPTのアカウントをまだ持っていない方から、使いこなしている方まで対応しています。
「AIにはできないだろう」と、試さない人が多い
――相談に来る方は、最初どんなことで困っていることが多いですか。
困っているというより、「なんかやばいな」と思って来られる方が多いですね。
みんなAIがすごいと言っているけれど、これは使ったほうがいいんですかね、という方です。
もう使っているという方もたくさんいます。ただ、詳しく話を聞くと、まったく使いこなせていないこともあります。
なので、まず「ちょっと話を聞かせてください」というヒアリングから入ります。
――最初に、よく伝えることはありますか。
簡単なことなら、「自分でやったほうが早いですよ」とは言います。
たいていのことなら、AIは人より物知りで、速い。だから、人に聞くよりAIに聞いたほうが早いよ、といつも言っています。
それでも聞きたい、教わりたいという方に向けて、「じゃあやりましょう」と引き受けています。
――AIを入れようとして、うまくいかない会社や人には、どんな共通点がありますか。
最初から「できないだろう」と決めてしまっていることですね。
「こんなところはAIにはできないだろう」「こんなことをお願いして大丈夫なんだろうか」と、考え方が詰まってしまっている人が多いんです。
無茶でも無理でもいいから、一度AIに聞いてやってみたら、と話すんですが、それでもAIに聞くのをためらう方がわりといます。
――ためらうのは、なぜでしょう。
難しいものだと思っているんですよ、たいていの人は。
難しい機械と同じで、触ったら大変なことが起きるんじゃないか、と。みんな簡単と言うけれど、それは使ってきたから簡単なんでしょう、という抵抗があるようです。
聞くのは最終目標だけ。手段はこちらで決める
――相談を受けたら、最初の打ち合わせでは何をしますか。
内容によります。AIをとにかく使えるようになりたいという方には、どんなツールを使っているかを聞いて、じゃあこういうことをやってみましょう、と教える形になります。
業務を改善したい、効率化したいという目的なら、まず業務の棚卸しのヒアリングから始めます。
みんな「この業務は無理だろう」と思い込んで、試していないことが多いんです。
なので、いま何をやっているかを全部聞きます。そのうえで「これはAIでほぼ効率化できますね」とこちらで判断して、ツールを作るか、やり方を教えるか、という順番です。
――ツールを作るところまで、対応されるんですね。
もちろんです。こちらで作ることも、こう直していけばいいと案内することも、両方あります。
――使っているツールは、何が多いですか。
ChatGPTが多いですね。少しやっている人だと、Claudeも使っています、という方もいます。それ以外だと、GeminiやCopilotくらいでしょうか。
会社のルールで使えるツールが決まっている場合も、ルールの中でやるならこういう使い方をしましょう、と幅広く提案できます。
――最初の要望とは別のところに、手を入れることもありますか。
AIについては、「ここをゴールにしたい」という最終目標しか、基本的に聞かないんです。
どうしたいかではなく、ゴールを聞く。手段は、こちらでガイドします。
――頼む側が、先に用意しておくと話が早いものはありますか。
いちばんは、解決したい課題と業務を書き出しておいてもらうことです。ヒアリングに、いちばん時間がかかるので。
「売上を上げたい」という相談なら、まずどうやって売上を上げているのかを聞きます。
何もない状態からお金を稼ぎたい、という方なら、設計から入ります。相談があれば、そこまでやっています。
(生貝さんへの相談は、AIのプロ名鑑の掲載ページのフォームから直接届きます。生貝さんの掲載ページ(相談フォーム) )
AIは「おもちゃ」だった
――このお仕事を始めたきっかけは何ですか。
ChatGPTが出たときからAIを触っているんですが、ずっと趣味でやっているという感覚なんです。要は、おもちゃなんですよね。
新しいものが出るたびに「おもしろいな」と、いろんなものを作って試しているうちに、たいていの人より詳しくなってしまいました。
その話をいろんなところでしていたら、教えてほしいという声が増えてきて、じゃあやるか、と。少し受け身ですが、求められて始めた感じです。
――いまも、AIでいろいろ作っているんですか。
はい。最近は、自分の作品集のサイトを、こまめに更新しています。3Dモデルやゲームを、AIで次々と作っているんです。
サイトの更新も、GitHubとつないで、全部AIでやっています。いまは3Dモデルが、けっこう熱いですね。
noteも次々と更新しています。いちばん伸びているのは、ファミコンを作った記事です。絶対に作れないと思うものを、みんな見に来るんですよね。
――これまでのご経験は、いまのお仕事のどこに生きていますか。
いろんなところで生きています。
新卒でシステムエンジニアの会社に入り、システムの設計(上流工程)やマネジメントもやりましたし、プログラムもたくさん書きました。
エンジニアの経験があって、AIに詳しくて、かみ砕いて教えられる人は、珍しいらしいんです。自分で言うのもなんですが。
コミュニケーションやプレゼン、教員免許もそうですが、人に話をする経験が多いことも役立っています。
それから、地味に、絵描き(アーティスト)としての経験も効いています。
――アーティストの経験は、どのあたりで生きていますか。
考え方の部分です。
AIは、少し使えば、誰でも一定のレベルまでは行けるんです。6割、7割のところまでは。
そこから先にどう行くかは、本人のセンスや、積んできた経験に大きく左右されます。そこで、自分が積んできた美的な感覚や、アート的な考え方が反映されています。
――そのセンスは、教わって身につくものですか。
センスは経験の積み重ねなので、近道はないんです。
だからこそ、とにかくたくさん触ってもらうようにしています。その場づくりは、一緒にやれます。
こればかりは、頑張って、と伝えるしかありません。
エンジニアの面でも、AIはときどき嘘をつきます。できないことを、できると言ったりする。そこを「いやいや」とこちらで判断できるのは、強みですね。
早く「もう要らない」と言われたい
――お仕事で大事にしていることは何ですか。
嘘をつかない誠実さが、いちばんです。
AIが出てきて、単価は下がり、スピードは上がり、誰でも作れるようになりました。仕事の仕組みそのものが変わっているんです。
だから僕は、簡単にできるようになったことは、簡単にできると伝えたいんです。簡単にできるなら、安く、ぱっとやってしまえばいい。なので、正直に全部言うようにしています。
――コンサルタントやアドバイザーは、長く続いたほうが収入になりますよね。
僕は逆で、早くできるようになって、もう要らないと言われたいんです。
そのほうがいいじゃないですか。お金も払わなくて済むし、自分で全部できるようになったほうが、絶対ハッピーなので。
ただ、経営者は手間を減らすためにお金を使うものです。それも理解したうえで、引き受けています。
やり方を教えてほしいと言われたら、全部教えます。
たとえば、毎月の請求書づくり
――話せる範囲で、印象に残っている支援の例を教えてください。
AIでいうと、ちょっとしたことなんです。
毎月の請求書づくりに2〜3時間かかっていて、なんとかしたいという相談がありました。
オンラインで2時間ほどつないで、それもAIにやらせながら、Googleの自動化の仕組み(Google Apps Script)を作りました。手で作業することすらなくなって、とても喜んでもらえました。
公式LINEの管理も、いまは「L Harness(LINE Harness)」という無料で使えるツールが出てきています。その話をすると、興味を持たれる経営者の方も多いですね。
僕は、情報量が多いらしいんです。情報が大好きなので自覚はないんですが、「最新でこういうものがあるよ」「こういうことができるようになったよ」と伝えるだけでも、喜んでもらえます。
知識ではなく、土台のリテラシーを
――決まったカリキュラムは、お持ちなんですか。
持っていないんです。AIは、特定のノウハウがすぐに古くなって、新しいものが次々に出てくるので。教えてと言われても、その時々で全然変わります。
だから、身につけてほしいのは知識ではなく、リテラシー、つまりAIを扱ううえでの土台です。知識は、AIに聞けば基本的に全部出てくるので。
――AI羅深盤(ラシンバン)を始められましたね。
まだ始めたばかりですが、その土台を身につけてもらうためのオンラインサロンです。これまでの経験や、AIに限らず大事だと思う考え方を伝えていきます。
これも同じで、学んで身につけてもらったら、抜けてもらってかまわない、というスタンスでやっています。
――対象は、経営者の方ですか。
一応、経営者向けです。ただ、経営者でなくてもかまいません。本当にゼロからの初心者だと、たぶんきついと思います。
(AI羅深盤とは別に、仕事の相談は、まったくの初心者の方からでも受けています。)
何に困っているかを聞いて、振り分ける
――AIで分からないことがあれば、まず相談すればいいですか。
そうですね。結局、課題を解決するだけなので。
相手が何に困っているかを聞いて、それなら、うちでシステムを作ってしまいます、ということもあります。ITの会社なので、作るのは得意です。
目的によっては、AIに聞きながらご自身で進めたほうが早い、とお伝えすることもあります。
相談の中身によっては、僕の話を聞いて経験値をためてもらったほうがいい、とAI羅深盤をすすめることもあります。
基本は相手しだいで、こちらの都合で何かをすることは、ほぼないです。
――お断りする相談はありますか。
いまのAIでは現実的に難しいことを求められる場合でしょうか。そのときは、正直にそうお伝えします。
あとは、相手を見下していたり、敵対心が強かったりする方は、お断りしています。反対意見のある方は、コミュニティとしてはむしろ歓迎なんですけどね。
まずは遊び道具として使ってみてほしい
――AIを使いたいけれど迷っている方に、ひと言お願いします。
とりあえず、遊び道具だと思って使ってみてください。
最近気づいたんですが、AIを使う理由には、ポジティブな理由とネガティブな理由の2つがあります。僕は楽しくて使っている側なので、使わない理由が分からないんです。
ネガティブな人は、「使わないとまずいだろうな」というマイナスから入っています。みんな使っているから、やばいな、と。SNSでもあおりまくりですからね。
だから、本当は使いたくない。AIが目の前にあっても、手作業を優先してしまうんです。
そういう人の、考え方の鎖のようなものを外してあげると、使い始める方もけっこういます。使えば、楽しさや便利さが分かります。
だから、まずは何でもいいから使ってみて、と話して、実際にやってもらいます。
――ほかに、伝えたいことはありますか。
AIは、めちゃくちゃ簡単なものだと思っています。
突き詰めれば、技術的な話はいくらでも出てきます。でも、最初の3〜4割までは触った瞬間に、6〜7割までは少し使えば、誰でも行けます。
セキュリティの話ももちろん大事です。ただ、会社のルールの範囲で、まず触ってみるのが先。そこからでも十分に間に合います。
まず使って楽しむことを、どれだけ早くできるかで、上達の速さが一気に変わります。まずはぜひ、使ってみてください。
――どんな方に相談してほしいですか。
AIを使っている人ですね。
使っていて詰まっている人。使ってはいるけれど、結局何をすればいいか分からない人。AIの成長の速さに、もうついていけないと思っている人。そういう人には、ぜひ来てほしいです。
お仕事は、いつでも募集しています。
生貝さんに相談するなら
向いている相談
- AIを使っているが、途中で詰まっている
- 使ってはいるが、結局何に使えばいいか分からない
- AIの進み方の速さに、ついていけないと感じている
- ChatGPTのアカウントをまだ持っていない段階からでも相談できます
頼めること
- 社員向けの研修・セミナー
- 顧問・アドバイザーとしての継続的な相談
- 業務の棚卸しから、AIでの効率化、ツールやシステムづくりまで
- 会社のルールで使えるツールが決まっている場合も、その範囲での使い方を提案
初回の相談
- 費用:初回のご相談は30分無料です
- 形式:オンラインのみで受けています
- 返事の目安:お問い合わせから3営業日程度でご連絡します
先に用意しておくと話が早いもの
- 解決したい課題と、いまの業務の書き出し
相談は、AIのプロ名鑑の掲載ページのフォームから、生貝さんに直接届きます。
編集後記
「自分でやったほうが早いですよ」。生貝さんは、AIの使い方を相談に来た人に、まずこう伝えるといいます。
相談を受ける立場の人から、最初に出てくる言葉とは思っていませんでした。「珍しいスタンスですよね」と言うと、返ってきたのは「あんまりいないと思いますよ」。
頼まれれば、やり方は全部教える。顧問として関わっても、目指すのは早く「もう要らない」と言われること。毎月2〜3時間かかっていた請求書づくりも、オンラインで2時間ほどつなぎ、手作業そのものをなくしています。
AIの仕事は、頼む側から中身が見えにくいものです。だからこそ、できることとできないことを最初に正直に言ってくれる人に、まず声をかけてほしいと思います。
何を頼めばいいかも分からない段階でかまいません。いま困っていることを1つ、フォームから生貝さんに送ってみてください。
(聞き手・文:中野輝規)
プロフィール
生貝遼太(いけがい・りょうた)
株式会社GAIBAKO 代表取締役。AIアドバイザー、AI講師、ゲームクリエイター。システムエンジニア歴10年以上、ゲーム開発歴7年以上。教員免許を4種類持つ。経営者向けAIコミュニティ「AI羅深盤」を主宰。
- 掲載ページ:生貝さんの掲載ページ(相談フォーム)
- AI羅深盤:https://ai-rashinban.com
- 作品集(ゲーム・3Dモデルなど):https://kamibukuro18.github.io/gaisan/index.html
- note:https://note.com/kamibukuro18
